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彼女は「自分のためだけ」にモノを買っているわけではない

  • 4月10日
  • 読了時間: 4分

顧客は“個人”ではなく、「人間関係の中で意思決定する存在」である


<本記事は、書籍の内容を再構成・抜粋したものです。>


女性インサイト総研

株式会社ハー・ストーリィ

代表取締役 日野佳恵子

世帯消費の7割に影響を持つ女性を起点に市場を捉えるHERSTORYを創業。顧客は、それを「なぜ買うのか」「買わないのか」を顧客起点から分析。独自の分析方法「女性インサイトマーケティング理論(WIM)」を開発普及。生活消費財メーカー、小売、自治体など幅広いクライアントに実装中。



 長年、女性インサイトを研究してきた中で、私はある確信にたどり着きました。それは、「女性は自分のためだけにモノを買っているわけではない」という事実です。


 商品を目にした瞬間、女性の頭の中には、自分以外の“誰か”が同時に浮かびます。

家族、友人、職場の人、子ども、親——。その人たちがどう使うか、どう感じるか、どう見られるか。そうした関係性と感情を織り込みながら、生活全体をシュミレーションするように意思決定をしているのです。


女性の購買は「個人」ではなく「関係性」で決まる



 従来のマーケティングは、「購入者=使用者=個人」という前提で設計されてきました。しかし女性の購買行動は、「購入者≠使用者≠個人=人間関係の中での意思決定」と捉えるべきです。つまり、個人最適ではなく、“関係性最適”のマーケティングが求められているのです。


 実際に、世帯消費において女性は約7割の意思決定に影響を持っています。これは単に女性向け商品を考えるという話ではありません。女性を理解することは、その背後にある家族、世帯、さらには周囲の人間関係に広がる市場を理解することに直結します。


 では、なぜ多くの企業は女性顧客を捉えきれないのでしょうか。それは「見えない意思決定」を見ようとしていないからです。


 例えば、「女性社員にヒアリングした」「女性にアンケートを取った」という話をよく聞きます。しかし女性は一枚岩ではありません。家族構成、ライフコース、置かれている生活環境によって、購買の判断基準は大きく異なります。世帯状態を見ずに意見を集めても、「バラバラでわからない」という結果になるのは当然なのです。



女性の意思決定は直線ではなく「網の目」である



 また、年代や年収で切る分析にも限界があります。女性はライフイベントによって働き方も収入も大きく変動しますし、単身であっても実家同居が多いなど、「数字」と「実態」が一致しないケースが多く存在します。つまり、従来のセグメンテーションだけでは、生活のリアルに届かないのです。


 さらに重要なのは、女性の購買は“合理”だけでは動かないという点です。

機能や価格だけでなく、「今の自分や家族に合っているか」「気分が上がるか」「誰かに伝えたくなるか」「社会的に納得できるか」といった複数の価値を同時に見ています。だからこそ、スペックが優れていても売れない一方で、「わかってくれている」と感じる商品は強く支持されるのです。


女性は6つの価値を同時に評価している



 HERSTORYでは、この複雑な意思決定を解き明かすために「女性交点クラスター」という独自の分類法を開発しました。これは、「ライフコース(世帯)×ライフステージ(年代)」の交点で顧客を捉える方法です。この視点で見ることで、顧客の生活実態、課題、そして本当のインサイトが立体的に見えてきます。





 インサイトとは、単なるニーズではありません。「こうありたいのに、そうなれていない」という理想と現実のギャップの中にある感情です。このギャップを理解しなければ、“買いたいスイッチ”は押せません。だからこそ、表面的なデータではなく、その奥にある感情と生活背景を読み解く必要があるのです。


 これからの顧客理解は、大きく変わります。

顧客はひとりではない。購買は個人の意思ではなく、関係性の中で生まれている。

この前提に立てるかどうかで、商品開発も、マーケティングも、すべてが変わります。

彼女は、自分のために買っているのではない。「誰か」と生きるために、選んでいるのです。






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